漫画家弘兼憲史が語る憲法改正

2018年10月3日のKAIKEN channelから文字起こしです。

※文字起こしは正確でない可能性があります。

弘兼憲史


司会(男) こんにちは、改憲チャンネルの時間です。よろしくお願いいたします。本日は、「課長島耕作」「人間交差点」「黄昏流星群」などで皆様よくご存知の、漫画家弘兼憲史先生の事務所にお邪魔いたしました。今日は先生、よろしくお願いします。

弘兼先生は政治家を主人公とした漫画「加治隆介の議」で、主人公の衆議院議員が外務大臣、防衛大臣、当初はまだ防衛庁長官ですか、で、日本の舵取りを担う際に世界の中から見た日本、また安全保障、憲法、こういう事を取り上げて頂いて、早くから憲法改正のことについてもご発言なされています。今日は「憲法と私」というようなテーマでお話をお伺いいたします。

まず冒頭ですが、先生は9条改正の必要性については早くからご発言をされてるんですけど、憲法問題を考え始めるに至った原点っていうか、きっかけみたいなところはどういうところになるのでしょうか?

弘兼憲史 前から疑問だったんですけども、日本は軍隊を持たないと憲法9条に書いてありますよね。で、自衛隊というのがあります。この自衛隊は戦車も持ってればイージス艦も持ってます、潜水艦も持ってればジェット戦闘機も持っている。これは軍隊でなくて何でしょうかっていうところからまず疑問がありました。それであの、自衛隊というのはですね、「戦力を保持しない」という条文に合っているのかどうかっていう。これはおかしいじゃないかと。そうすると自衛隊を無くすのかというと、現状からしてそれは現実的ではないですよね。そうすると、まず書いてある憲法の方がおかしいんじゃないかというところから、ですよ。

憲法が出来た時点は確かに軍隊も何もなかった時点ですから、それから段々自衛隊の元があり、それから名前が変わっていって最終的に自衛隊になった現在の姿なんですが、憲法だけがそのままだから、ここにどうしても矛盾が出来てしまう。そしたら、現実を考えれば憲法の方を変えたほうがいいのではないかということを前から思っていましたね。

司会(女) 先生は70年代の頃から漫画をお描きになられて、その頃からそういったお考えを持たれていたんですか?

弘兼憲史 もう大学時代からですね。僕は1966年に大学に入ったのですが法学部(※早稲田大学法学部)だったんで、憲法とかいろいろですね、そういうのを勉強しておったんですが、一番最初に疑問だったのはそこだったですよね。なぜなんだ!?と。

自衛隊があるのになぜ戦力を保持しないんだ、おかしいんじゃないかっていうところから、ハイ。調べてみると何となく、ごまかしごまかしやってきてるっていうのが現在なんですよね。そろそろみんな真剣に考えて、日本はやっぱり軍隊があるんだというのをですね、これ明記しなきゃいけないっていうのを前からずっと思っておりました。もうその一点だけなんですよ。他の憲法いろんな所、問題点はありますけども、とにかく一番最初に直さなきゃいけないと思うのは9条です。

司会(女) 先生といえば、島耕作の漫画で有名な方なんですけど、でも「加治隆介の議」というのも政治家の話、すごくわかりやすく政治が読み取れるなというか・・

加治隆介の議

弘兼憲史 そうなんですよ。僕は「課長島耕作」っていうのを始めて、だいたい10年くらいやったんですけども、10年でちょっと飽きちゃったんですね。課長が終わって、部長になったとろこで一回やめたんです。やめて、次は何やりたいかというと、前から思っていた政治家の話を。政治家が主人公の漫画ってあんまり無いんですよね。

司会(女) そうですよね。

弘兼憲史 あっても若干コミカルなタッチでやるっていうほうが多くて、リアルに現実的な政治の漫画ってのは今まで無かったもんですから、それは漫画を読んでいる方々にも、まぁ自分も一緒に勉強して現在の日本の政治ってのはどうなってるんだろうなっていうのを皆に分かってもらう、自分も勉強しながら分かってもらうという姿勢で始めたんです。これはだいたい7年間くらいやったんですが、これが終わって「部長島耕作」が始まったんですよね。

司会(女) そうなんですね。

弘兼憲史 これをやっている間にも読み切りではポツポツと描いておったんですが、本当に課長と部長の間にこれ(加治隆介の議)をやったということですね。

司会(女) 恥ずかしながら今回私、インタビューをさせていただくにあたって、初めて島耕作と加治隆介の議を読まさせて頂いたんですね。なかなか女性としては島耕作は手が届きにくいというか(笑)。でもすごい夢中になって読んでしまいまして、特にこの「加治隆介の議」なんていうのは10数年前のお話・・

弘兼憲史 1992年ですから、もう25年くらいですかね。

司会(女) でも現在の政治状況とすごいそっくりというか・・

弘兼憲史 問題点は全く変わってないですよね。この時はまだ赤字国債は400兆円くらいだったかな?今はもうすごいじゃないですか(※2018年3月末時点で、国の借金は1087兆円)。この時から既に、いまに大変な事になるよと警告はしてるんですが、段々段々増えていって。

司会(女) しかもこの憲法の議論についても、安全保障の議論についても全く変わっていない。

弘兼憲史 変わってないですね。

司会(男) 2年前に安全保障の問題が国会で論議されて、安全保障法制が出来たわけですけれど、その時にいわゆる集団的自衛権、これが大いに論議になった。一般の方々もなかなかこれどういう風に考えたらいいの・・

弘兼憲史 一般の方々は、集団的自衛権を認めると、アメリカの戦争に日本が巻き込まれるんじゃないかという、まずそういう風に考えられるんですね。根本が、考え方が全然違っていて、防衛というのはですね、一国だけで防衛しようとすると相手方の国と同じ戦力を持たないとやっていけないわけですから。軍拡競争になってしまいます。インドとパキスタンみたいな形になってしまいます。そうするとお互いに核を持ち合うという形に。この軍拡競争だけは絶対避けたいですよね。そうすると自分は小さい国で戦力は小さくても、力の強い大きな国からの侵略を受けた時には、みんなに呼びかけて、みんなで手を携えて、みんなで一緒に守ってくれませんかと。そしてもしあなた方が違う国がやった時は、私達が守りますからという、集団安全保障という概念ですね。それも、集団安全保障をやって、大きな国に対抗する、それには集団的自衛権というのを持っておかなきゃいけないんです。世界中どこの国も持ってます。

日本だけがですね、まぁ持ってるんだけども、行使しないんですよね。

司会(男) 長い間そういう解釈でねぇ。

弘兼憲史 これおかしい話ですよね。保持してるなら行使もできるはずなんですが、内閣法制局のね、判断でこういうことになってるんですが。やっと最近ね、それが無くなったということでね。

(後略)

続きは動画で御覧ください。

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