奥山真司の地政学・リアリズム「アメリカ通信」の「どんな人?「リベラルこそが世界を不安定にしてる!」「中国が平和的に台頭することはない!」20年前に喝破していたミヤシャイマーって…」という動画から文字起こしです。
※文字起こしは不正確である可能性があります。
和田憲治 で、ミアシャイマーに戻って、この、今回の記事(注 The Great Delusion: Liberal Dreams and International Realities のこと)。
奥山真司 で、この記事で何を言っているか。この次に出る新刊の要約版という形で出ます。日本にはまだ新刊届いてないんですけど、注文したけどまだ届いてないです。この本の中身は何を言っているかというと、単純に言えばですよ。単純に言えば、いかに、まぁ彼(ミアシャイマー)はリアリストの立場じゃないですか、リベラルをやっぱアメリカの中で無駄に信奉している人たちがいっぱいいると。このリベラルの人たちをとにかく批判する内容の本なんです。リベラルはいかに間違っているか。彼の最終的な結論は何かというと、リベラルの考え方の国際政治の理論の考え方こそが世界を不安定化させていると言い切っちゃってます。
和田憲治 そうですよね。
奥山真司 パワーを追求するって、何ていうんですか、ありのままの姿っていうわけじゃないですけど、その、パワー同士のぶつかり合いってことを認識せずに、「いやいやいや、アメリカはもうこれから世界に向けて、人権を追求し、民主主義を追求し、困った人を救い、全部そういうことやっていくんだ。そうすると世界は安定する」っていう考え方はいかに間違っているかという事を滔々と述べる内容になっております。
和田憲治 これは是非、朝日新聞の愛読者の人たちには読んでほしいですね。
奥山真司 多分生理的に、文の一文目から受け付けないと思います。それくらい拒否反応を・・。ルトワックもそうなんですけど、やっぱりこういうなんていうんですかね、激しい議論を敢えてしてしまう人たちって、やっぱり書き方が、特にミアシャイマーなんかそうなんですけど、ずばり言ってくるんですね。まずリベラルの考えはwrongだと。いきなり間違っていると。いきなり、初っ端から出してくるとか。なので、そういう意味で受け付けないっていう。非常に単純にばっさり斬ります。
和田憲治 リベラルはねぇ、安倍が悪いしか言わないんですよ(笑)。
奥山真司 日本のね。日本のリベラルは、じゃないですか。
和田憲治 それにつけても安倍が悪い。
奥山真司 それにつけても安倍が悪い(笑)。ハイ。Botでそういうのあるでしょ?全ては安倍のせいだとかいう・・、あれ面白いんですけどね。とにかくリベラル派を徹底的に批判する議論を展開します。でね、今回ナショナル・インタレストに要約出てたんですけど、何を言っているか。僕が彼のイントロダクションの部分の要約の部分なんですけど、一番僕凄いなと、ミアシャイマーの議論で面白かったのはですね、リベラルのコアの一つの価値観として挙げるのは「人権」じゃないですか。
和田憲治 そうです。人権だと。
奥山真司 一応、国と国同士が争いをしてたってのは過去数百年間の歴史ですね、国際政治における。ところがリベラルの人達って、日本のリベラルは失格ですよ、この点、失格ですけど、その人権と呼ばれるものは全ての人間にとって平等というわけじゃないですか。いや、僕も心の中ではそういう風に思いたいですよ。紫さんも和田さんも全て人権は平等だと言う風に思うわけじゃないですか。で、お隣の国の全員も人権は僕は平等だと思いたいです。
和田憲治 だけどまぁ、基本的人権くらいだよね。
奥山真司 基本的人権は、皆さん生きる価値もあるしってことは僕も思いたいんですけど、どうも国際政治の現実から見てるとそれはキビシイじゃないですか。で、リベラル派の人たちが実は本気でそれを信じてる人たちがいるわけです。で、それを「~ねばならない」という形で、例えばですよ、日本、今、人権状況、世界的にいいとしましょうか。悪いという人もいるんですけど。
和田憲治 超いいですよ。
奥山真司 超いい方ですよね。基本的人権もあると。ところが、日本が例えば隣の北朝鮮、北朝鮮の人たちの人権、無いとは言わないですけどほぼゼロに近いじゃないですか。
和田憲治 ゼロですね。
奥山真司 日本に比べたらね。100と1くらいの差があるわけじゃないですか。そうすると日本の人たちはですよ、スーパーリベラルの人たちは、本当は同じ人類の人権は全員平等なんだから北朝鮮に行って北朝鮮の首領様の首を取り替えて、日本と同じ様な北朝鮮にしてやろうと。人権を守らせようと。これは普通の、本来の人権の、リベラルの人たちの考えるべき考えじゃないですか?
和田憲治 そうです。でも実際はやらないじゃないですか。中国に対して、チベットとかについてはやらないわけじゃないですか。
奥山真司 やらないです。
和田憲治 ハミルトン教授(※サイレントインヴェイジョンの著者)はやろうとしてた。だから騙されてるのに気づいたわけですよ。
奥山真司 まぁ、まぁ、そういうことです。そういう、例えば、僕が、アメリカみたいな立場とすると、北朝鮮の政権を「じゃあ潰そう」ってことになる。でも本当に人権を信じたら、やっぱり北朝鮮みたいな独裁者が存在するってことは認められないことになりますよね。
和田憲治 まぁ、あの、習近平もそうですよね。
奥山真司 実際にアメリカはそういうレトリックを使って、イラクに2003年に侵攻してますよね。あれはやっぱりあの彼らの中で、大量破壊兵器っていうのも一つありましたけど、サダム・フセインが自分たちの自国民に向かってね、自国民といっても異民族ですけど、クルド人に向かって毒ガス使ってるとか、いろいろありました。そういうことでやっちゃうわけじゃないですか。つまり、その国際政治の現実ってのは、実はみんながナショナリズムで「国民国家欲しい」って言ってる、ISだってそうじゃないですか、「自分の国家欲しい」ってワーってやってたにもかかわらず、全ての人権が平等だから、全ての人権を平等に扱わなければいけないってことになると他国に侵攻してもOKということになっちゃう。
和田憲治 そうですね。
奥山真司 本当にリベラルを追求すると。それはまさにネオコンがやったことじゃないですか、実際は。そうなんですよ、だからそこの部分ですよ。人権を平等って言っても、勿論建前として言うのはいいかもしれないしれないけど、アメリカって結構それを本気で信じてる人たちがいて、やっぱりイラク人も同じ様に、まぁイラク人っていう概念がそもそもおかしいっていう話はあるんですけど、まぁそのイラクの人たちも同じ様に、アメリカと同じ様な選挙の権利であり何なりを持つべきだ、持たせるべきだっていうことになっちゃうじゃないですか。で、その本気で軍事侵攻とかするとヤバイことになる。まさにこの、こういう、何ていうんですかね、矛盾のところをミアシャイマーは突きまくるんですよ。
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